━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■■ 自動車教習所 値下げ競う
■■■
━━━━━━━━━━━━━ 日本経済新聞 2002.8.26【17面】━
◆自動車教習所の受講料が下落している。運転免許の新規取得が多
い若年層が減り、限られた顧客を巡って教習所間の競争が激化して
いるためで、過去5年間の下落率は1割強に達している。
◆仮免許試験が不合格でも追加受験料が不要だったり、合宿制教習
に観光を加えるといった多彩なプランも登場している。
◆普通自動車運転免許の受講料は授業料に相当する学科・技能教習
費のほか、入学金や教科書などの教材費、技能検定料などを含む。
◆通学制の場合、現在の平均的な水準は25万−28万円程度(東京、
マニュアル車)で、5年前に比べ10−15%下がっている。首都圏で
は24万円台、関西では23万円を下回るケースもある。
◆短期間での免許取得が可能な合宿制の場合は、職員の人件費など
が大都市より安いかわりに、現地までの往復の交通費、滞在費や食
費なども含むため通学制より料金は高め。
◆それでも夏休みや春休みなどピーク期で28万円前後が主流で、や
はり5年前に比べれば1割強安くなっている。
◆料金低下の背景は少子化による生徒の減少。普通自動車免許の取
得が可能な十代後半の人口は年々減少しており、生徒不足から教習
所の淘汰(とうた)も進行中。
◆全日本指定自動車教習所協会連合会(東京・新宿)傘下の教習所
は2002年8月現在1428校と、1997年に比べ38校減少している。生き
残りをかけて各教習所が値下げ競争を繰り広げている構図だが、一
方で教習に付加価値をつける動きも活発だ。
◆通常、仮免許試験が不合格だと追加の受験料や補習費などで1万
円前後かかるが、通学制では「追加受験料不要」を掲げる教習所が
増えている。生徒が教官を選べる指名制や、教習車に高級外車を採
用して話題を呼んでいる教習所もある。
◆ただ、教習所への生徒あっせんで大手のナンバメイト(東京・新
宿)によると「通学制は立地条件に左右されるだけに、プランで目
新しさが目立つのは合宿制」という。
◆吾妻自動車学校(山形県米沢市)では、生徒向けに米沢牛の焼き
肉パーティーやサクランボを用意している。フェニックスモーター
スクール(宮崎県佐土原町)は牧場での乗馬体験をプランに盛り込
むなど、グルメやリゾートを組み合わせている教習所が多い。
◆生徒数は先細りが続く見通しだが、これ以上の値下げ競争は教習
所経営を圧迫するというのが業界の一致した見方だ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■
■■■ 市場の成熟度により変化する値下げの効果
■■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 経営戦略考コメント ━
●景気が悪いだのデフレ経済だのと言われていると、価格の下落と
いう話にも驚かされない。今回は自動車学校の料金が下落傾向にあ
るという話。
●18歳人口の増減がほぼそのまま市場規模の増減となる業界だ。18
歳人口の減少の影響をモロに受ける。市場の縮小で競争が激化すれ
ば、価格は下がっていく。
●競争に生き残る手段として、価格競争ではなく、付加価値で勝負
する方向性もある。しかし、その分をすべて価格に転嫁できるわけ
でもないし、顧客は富裕層でもない。付加価値分は実質的な値下げ
にもなりかねない。
●価格競争よりも付加価値競争の方が、より発展した形のように見
えるかも知れないが、所詮は限られた市場の中でのシェアの争いだ。
縮小はすれども一定の規模は確実に見込める市場であるし、淘汰を
生き残れば、それなりの利益は享受できるであろうが、事業として
の「窮屈感」は否めない。
●自動車運転免許の普及率はかなり高いため、市場は既に顕在化し
ており、しかも拡大を見込めない。「窮屈感」から解放されるため
には、潜在市場を顕在化させる、すなわち市場を創造するマーケテ
ィングが必要となる。今回の記事からは、その視点が全く感じられ
ないのが残念だ。
●現実には、自動二輪免許取得や、中高年の再教習といった新市場
を取り込む動きもみられる。あるいは、合宿式の場合、近隣ではな
い遠隔地から集客を図るケースもある。後者は地域的な面での新市
場獲得の動きだ。
●18〜20歳という極めて明確にセグメントされた顧客層が集まると
いう特性から、自動車教習所がらみでのビジネスチャンスは大きい
という見方もある。新たな業態、新たなビジネスモデルを持つ教習
所の登場を待ちたいところだ。
●いろいろな業界で値下げが進んでいるわけだが、今回の記事のよ
うに、市場が顕在化し、拡大を見込めないという特徴的な市場での
値下げは、生き残りを賭けた値下げだと言えよう。誰かが勝てば誰
かが負けるという、サバイバルレースの色彩が強い。
●一方、市場を拡大する値下げというものもある。高額な家電製品
など、値下げにより普及率が高まり、市場が拡大していく。高いう
ちは手が出ないが、安くなれば買ってみようということになる。自
動車教習の料金については、その理屈は適用されない。
●両者の値下げの違いは、商品の普及率がどうかという点にある。
市場の成熟度と言い換えてもよいだろう。市場の成長期における値
下げと成熟期における値下げ。
●前者は企業の収益・利益を拡大する展望があるが、後者は企業の
体力を奪う過酷なサバイバル・レースとなる。単純に「値下げ」と
言っても、市場の状況により、企業に与える影響は大きく異なって
くるということは押さえておくべきだろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■■ 今日の教訓 ■■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あなたの企業が行なう値下げは、市場拡大に寄与するだろうか、そ
れとも収益を圧迫するだけだろうか。市場環境と値下げによる効果
を見据えて、賢い値下げを選択しよう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━